トピックス
ご挨拶
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、今般「つなぐだより福岡」第5号をお届けいたします。拡大新生児スクリーニングの実施状況やトピックスを掲載しておりますので、是非ご覧ください。
今後ともご協力とご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
KMバイオロジクス株式会社
新生児スクリーニングセンター長 原田健司
2022年日本マススクリーニング学会学術集会に参加しました
第49回日本マススクリーニング学会学術集会が2022年8月26日(金)・27日(土)、大阪市中央公会堂で開催されました。
本学会の歴史は古く、1973年に発足した代謝異常スクリーニング研究会が前身で、この4年後には当時の厚生省の通知により日本で新生児マススクリーニング(先天性代謝異常等検査)が開始されました。研究会は1990年に正式に学会となり、今日まで新生児スクリーニングに特化した学会として医療、検査技術の進化と共に活発な活動が行われています。
今年の学会の大きなトピックは拡大スクリーニング(拡大検査)の進展です。拡大検査は、従来の20疾患を対象にした先天性代謝異常等検査(公費負担)とは別に、主にライソゾーム病(LSD)や重症複合免疫不全症(SCID)、脊髄性筋萎縮症(SMA)を検査します。体制の整った地域でご家族の希望及び費用負担にて実施されるものです。
既に九州では複数の地域でこの拡大検査が始まっており、今回の集会でも全国から患者発見を含む検査の実施報告がありました。さらに、シンポジウムやセミナーも開催され、拡大検査の公費化に向けた課題などについても積極的な議論が行われました。今後、公費検査と拡大検査共に本学会にて議論が行われていくと考えられます。
「第10回九州新生児スクリーニング研究会」が開催されました
今年5月21日(土)に熊本大学小児科、一般社団法人日本小児先進治療協議会主催の「第10回九州新生児スクリーニング研究会」が開催されました。当研究会では全国の新生児スクリーニングに関わ
る医療機関や検査機関、行政の関係者がウェブ上で臨床や研究に関わる発表や討論が行われています。
今回は下記の内容が行われました。また、治療までの時間短縮、両親の意思決定、体制づくり、公費助成など今後の課題について意見交換もありました。詳細は、同協議会様のホームページ(下記QRコード)をご覧ください。
拡大スクリーニング検査
実施状況
2022年9月までに実施された、国指定難病(ライソゾーム病)の拡大スクリーニング検査実施状況をお知らせします。
<拡大スクリーニング検査実績まとめ>
要精密数
検査の結果病気の疑いがあるため、精密医療機関の受診をお願いした方の数
診断確定数
精密検査機関で、疾患と診断が確定した方の数
ライソゾーム病とは...
特定の遺伝子異常により、ライソゾーム酵素の欠損または活性が低下し、本来分解されるべき基質が細胞内に蓄積し、正常な細胞活動ができなくなることで発症する先天性代謝異常症です。
ライソゾーム病としては現在、60種類以上の疾患が報告されており、主な疾患として、ファブリー病、ポンペ病、ゴーシェ病、ムコ多糖症などが挙げられます。
福岡での詳細データ
●ファブリー病
福岡県 | 受検数 | 要精密数 | 確定数 |
2014年7月~ 2022年3月 | 226,340 | 64 | 21 |
---|---|---|---|
2022年4月~ 2022年9月 | 16,876 | 6 | 0 |
合計 | 243,216 | 70 | 21 |
患者発見頻度:1/11,582 (243,216名検査、21名発見)
(参考)患者発見頻度:1/10,724 (504,048名検査、47名発見)(福岡・熊本での実績集計)
●ポンペ病
福岡県 | 受検数 | 要精密数 | 確定数※ |
2014年7月~ 2022年3月 | 226,340 | 88 | 1 |
---|---|---|---|
2022年4月~ 2022年9月 | 16,876 | 6 | 0 |
合計 | 243,216 | 94 | 1 |
※乳児型のみ集計
患者発見頻度:1/243,216 (243,216名検査、1名発見)
(参考)患者発見頻度:1/387,745 (387,745名検査、1名発見)(福岡・熊本での実績集計)
●ゴーシェ病
福岡県 | 受検数 | 要精密数 | 確定数 |
2019年4月~ 2022年3月 | 105,671 | 1 | 1 |
---|---|---|---|
2022年4月~ 2022年9月 | 16,876 | 0 | 0 |
合計 | 122,547 | 1 | 1 |
患者発見頻度:1/122,547 (122,547名検査、1名発見)
(参考)患者発見頻度:1/41,176 (205,882名検査、5名発見)(福岡・熊本での実績集計)
●ムコ多糖症I型(MPS1)
福岡県 | 受検数 | 要精密数 | 確定数 |
2019年4月~ 2022年3月 | 105,671 | 5 | 0 |
---|---|---|---|
2022年4月~ 2022年9月 | 16,876 | 0 | 0 |
合計 | 122,547 | 5 | 0 |
●ムコ多糖症Ⅱ型(MPS2)
福岡県 | 受検数 | 要精密数 | 確定数 |
2019年4月~ 2022年3月 | 105,671 | 72 | 1 |
---|---|---|---|
2022年4月~ 2022年9月 | 16,876 | 16 | 0 |
合計 | 122,547 | 88 | 1 |
患者発見頻度:1/122,547 (122,547名検査、1名発見)
(参考)患者発見頻度:1/205,871 (205,871名検査、1名発見)(福岡・熊本での実績集計)
大切な赤ちゃんへ
お父さん、お母さんから
最初のプレゼント
生まれてすぐに
指定難病(ライソゾーム病)の
検査ができます
ライソゾーム病とは
酵素異常や欠損により発症する疾患で難病(ファブリー病、ポンペ病など)に指定されています。生まれてすぐに検査する新生児マススクリーニングろ紙血を使用した検査が可能です。
子どもの健やかな成長を願う気持ちは、どの家庭も変わりありません。
しかし、もしわが子に難病を発症するリスクがあったとしたらどうでしょう。今は、公費で行われている先天性代謝異常等検査に加え、国指定の難病「ライソゾーム病」の拡大スクリーニング検査が、出生時に採取するわずかな血液(血液ろ紙)でできるようになりました。早期発見、早期治療で赤ちゃんの発症、重症化予防につなげるために検査を受けましょう。
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検査内容
新生児スクリーニング検査とは、生まれつき特定の酵素が欠損、あるいは特定のホルモンが不足することなどで、知的障害や身体の発育に障害を起こす先天性の疾患等について早期発見するための検査です。
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検査方法
生まれて4~6日目の赤ちゃんのかかとから少量の血液を採取し、新生児スクリーニングセンターで検査します。新生児マススクリーニング検査は、公費検査とその他の疾病(ライソゾーム病)を検査する拡大検査(有料)があります。拡大検査を希望されても、追加の血液採取はありません。
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検査申し込み先
出産予定の産科医療機関(分娩取扱施設、産院、助産院)に申し込みをしてください。
検査に関すること、申し込みについての詳細は、出産予定の産科医療機関にお尋ねください。